「婚外子差別撤廃のための戸籍法改正の意見書の提出を求めることに関する陳情」に対して【反対討論】

先日配布された「市議会だより」にも掲載されていますが「婚外子差別撤廃のための戸籍法改正のに関する意見書」が賛成多数で可決されました。

本意見書は3月議会において「婚外子差別撤廃のための戸籍法改正の意見書の提出を求めることに関する陳情」が提出され、今議会の総務委員会で採択されたことにより本会議での議案となりましたが、私は以下の理由により反対の立場から討論を行いました。

●平成25年9月26日の最高裁第一小法廷において下された判決では『本件規定は、嫡出でない子について、嫡出子との関係で不合理な差別的取扱いを定めたものとはいえず、憲法14条1項に違反するものではない』 と明言されており、事務処理上の可否についても『市町村長の事務処理上不可欠の要請とまではいえないとしても、少なくともその事務処理の便宜に資するものであることは否定し難く、およそ合理性を欠くものということはできない』と本規定は合憲であると全員の裁判官が一致をしてる。

●『立法府において(本規定を)見直すべき』との補足意見が付いている事に対しては、生まれてくる子どもの意思に関係なく、親の判断により無戸籍の状態が7年も続いたことを憂いているものであり、そういった事例を出さないために、記載方法の変更や削除を含めた制度の在り方について見直しを求めているもので、記載欄の削除ありきでの見直しを求める意見でない。

●戸籍の記載事項に関しては、私たちの社会生活において、他人に戸籍を見られたり、他人の戸籍を見る機会ということは極めてまれであり、このことにおいて差別が起こるということは、論理の飛躍である。

●近年諸外国でも法改正が行われいるといわれているが、それぞれの国においても宗教による結婚観の違いや、社会保障制度の違いといったことから、一概に我が国に当てはめることはではない。

●我が国の婚外子の割合は他国に比べ圧倒的に低く2%程であり(もちろん少数派だから切り捨てて良いという事ではないが)この割合が示すことは、今現在も多くの日本人が法律婚にもとずいた家族制度を重視していることの表れであり、その国民性を無視した法改正はするべきではないと考える。

以上の事から私は本陳情に反対討論を行いましたが、残念ながら反対5・賛成17で採択され同様に提出された意見書も可決されてしまいました。(詳細な賛否結果

国においても一時期同様の法改正が行われる動きがありましたが、もし法改正を行うのであれば、単純に「嫡出子・非嫡出子」の記載を削除するのではなく、家族の在り方や、親としての責任、そういった事も踏まえた議論の上で改正されることを望みます。

 

発言内容全文↓—————————————————————————————-

「婚外子差別撤廃のための戸籍法改正の意見書の提出を求めることに関する陳情」に対して、反対の立場から討論いたします。

まず1点目、出生届における、嫡出子・嫡出でない子の別の記載欄の廃止を求める事の根拠の一例として、平成25年9月26日の最高裁第一小法廷において下された判決が挙げられています。陳情書では、判決の中身について「違憲とまではいえない」と述べるものの「この欄が必要不可欠とまでいえない」と明言し「立法府において見直すべき」との補足意見が付されていることから、現状を積極的に肯定したものではありません、と述べられています。

しかし、実際の判決文においては、当該事案に関わる戸籍法・民法の具体的な解説ののちに、はっきりと「本件規定は、嫡出でない子について、嫡出子との関係で不合理な差別的取扱いを定めたものとはいえず、憲法14条1項に違反するものではない。」と明記されており、

事務処理上の可否についても「市町村長の事務処理上不可欠の要請とまではいえないとしても、少なくともその事務処理の便宜に資するものであることは否定し難く、およそ合理性を欠くものということはできない。」とされており、判決理由のすべてを読めば、出生届による記載は合憲であると積極的に肯定しており、全員の裁判官が一致をしています。

また「立法府において見直すべき」との補足意見に関しては、このように述べられています。
「本件については、上告人子の出生届の提出に際し、その届書に「嫡出子又は嫡出でない子の別」の記載がなかったことから受理されず、結果的に上告人子が出生から7年以上にわたって戸籍に記載されず、ひいては住民票も作成されないという事態が生じていた。」

「出生届の記載の仕方という子本人の意思では左右し難い事情に起因する無戸籍状態のために、子自身に種々の不利益や不便さが生じるという事態は、確実に避けられるべき事態といえよう」

と、事の重大さを指摘した上で、次のように続きます。

「本件のような事態に陥る嫡出でない子の問題の発生を、将来にわたって極力避けるためには、父母の婚姻関係の有無に係る記載内容の“変更”や削除を含め、出生届について、戸籍法の規定を含む制度の在り方についてしかるべき見直しの検討が望まれるところである」
と結ばれており、この補足意見は、子の意思に関係なく、親の判断により無戸籍の状態が7年も続いたことを憂いているものであり、そういった事例を出さないために、当記載の変更や削除を含めた制度の在り方について見直しを求めているもので、記載欄の削除ありきでの見直しを求めている意見ではありません。

以上の事から、この裁判の判決の内容は、本陳情の趣旨である、出生届から嫡出子・嫡出でない子の別の記載の廃止を求めることへの、根拠や後押しになりうるものではなく、現在の法律婚や家族制度を守りつつ、今後このようなことを起こさないためにも、改めて考える必要があると述べているものだと考えます。

また、戸籍の記載事項に関しては、私たちの社会生活において、他人に戸籍を見られたり、他人の戸籍を見る機会ということは極めてまれであり、このことにおいて差別が起こるということは、論理の飛躍であると考えます。

さらに、近年諸外国でも法改正が行われいるといわれていますが、それぞれの国においても宗教による結婚観の違いや、社会保障制度の違いといったことから、一概に我が国に当てはめることはできません。

わが国においても、事実婚やシングルマザーと言った言葉も良く聞かれるようになり、社会情勢が変化しているという主張もありますが、出生に占める婚外子の割合は他国に比べ圧倒的に低く、2%程であります、もちろん少数派だから切り捨てて良いという事にはなりませんが、この割合が示すことは、今現在も多くの日本人が法律婚にもとずいた家族制度を重視していることの表れであり、その国民性を無視して家族制度の崩壊を招く恐れもあるような、法改正はするべきではないと考えます。

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