武蔵境駅北口市有地有効活用事業における問題点(1)_屋上バーベキュー場は適法か?

◇武蔵境駅北口市有地有効活用事業における屋上バーベキュー場は適法か?
武蔵境駅北口市有地約600㎡は都市高速鉄道(平成6年5月11日都市計画決定)により、都市計画法第53条による建築制限がかかっており、許可の要件は同法第54条により「階数が二以下で、かつ、地階を有しないこと」と定められている。

都市計画法では屋上利用に関する定めがないため、この場合は建築基準法における階数の規定が適用される。

建築基準法施行令第二条第一項八号では

建築基準法施行令第二条第一項八号
-階数- 昇降機塔、装飾塔、物見塔その他これらに類する建築物の屋上部分又は地階の倉庫、機械室その他これらに類する建築物の部分で、水平投影面積の合計がそれぞれ当該建築物の建築面積の八分の一以下のものは、当該建築物の階数に算入しない。また、建築物の一部が吹抜きとなつている場合、建築物の敷地が斜面又は段地である場合その他建築物の部分によつて階数を異にする場合においては、これらの階数のうち最大なものによる。

つまり、昇降機塔、装飾塔、物見塔その他これらに類する建築物で、水平投影面積が当該建築物の建築面積の8分の1以下のものは、階数に算入されず、これらに該当しないものは階数として算入されることになる。今回の事業の屋上バーベキューガーデンが階数として算入されれば、都市計画法上の許可が下りないことになる。

私は今回の事業内容を聞いた際にまずこのことが頭に浮かび、市の選定に瑕疵があったのではないかとの疑念は未だに晴れてはいない。

◇単純な広場開放ではなく商業施設である
今回の事業では、屋上にバーベキューガーデンを設置するとある。これは広場として開放するのではなく商業施設であり、商業施設としての機能を持たせた場合、階数として算入される施設となる可能性は高い。この件に関しては昨年12月の一般質問でも触れ、先のブログで紹介済みなのでご参照いただきたい→
<ブログ:武蔵境駅北口市有地有効活用事業は立ち止まるべき>

ちなみに市長からは「建築基準法に基づく判断に基づいて、違法性のない、もちろんグレーゾーンでもないような形で明確に、法に抵触しない形での利用とする」といった旨の答弁があった。当然のことである。

◇屋上に不特定多数の人が出入りすることは認められるのか
建築基準法上、高さ・階数の算定について具体的に示されている資料がある。
平成7年5月22日付けで当時の建設省住宅局建築指導課建設専門官より特定行政庁建築主務課長あてで出された通知である。→<「高さ・階数の算定方法・同解説」について>

この中では日本建築主事会議基準総則研究会の検討結果として、建築基準法施行令第二条第一項第八号の屋上部分の取扱いに関して、
「水平投影面積が同号の基準を満たす場合、階数に算入されない建築物の屋上部分とは、通常の使用時には人が通行せず、かつ、用途、機能、構造上、屋上に設けることが適当であると認められる部分をいう。」と見解が示されている。

続けて具体例として
(ア)「屋根及び柱若しくは壁を有し(つまり屋内的空間を有し)、形式的には「階」に該当するが、保守点検時、非常時を除き、通常の使用時には人が内部に入らないこと。

(イ)用途、機能、構造上、屋上に設けられることが適当であること。
従って、高架水槽の点検時のみしか用いられない階段室等は前記(ア)及び(イ)に該当すると考えられるため、水平投影面積の制限内であれば階数に算入されない。

と明記されており、屋上のバーベキューガーデンに出入りするための階段室やエレベーターホールは三階として算入され、都市計画法による許可を出すことは出来ないことになる。

市の担当課に問い合わせたところ、「現在、市が判断基準として用いているのは建築行政会議が発行している『建築基準総則 集団規定の適用事例』であり、この中には階数の判断基準として人の出入りなどは記述されていない」との回答であったが、はたしてそのような判断が許されるのだろうか。

「事例に記述されていない=階数に算入されない」ではなく、記述されていない理由は、階数に算入される・されないの考え方が確立しているからではないだろうか、平成7年の通知以降に、このことに対する見解が変わったという公式の資料はない。

◇「高さ」と「階数」の算定では階段室の取り扱いが違う
建築基準法施行令を読み込んでいるうちにある違いに気付いた、令第二条第一項第六号ロでは高さの算定の対象として「階段室、昇降機塔、装飾塔、物見塔、屋窓その他これらに類する建築物の」とあるが階数に算入しない施設としては「昇降機塔、装飾塔、物見塔その他これらに類する建築物の」とされ、「階段室」は記されていない。

このことは、一定の基準を満たした階段室は高さに算入されないが、(昇降機塔等の施設をメンテナンスするための必要最小限の階段室を除き)単純に屋上へ出入りをすることを目的とした階段室は階数に算入されることになるということを示している。

建築基準法施行令第二条第一項第六号ロ
法第三十三条 及び法第五十六条第一項第三号 に規定する高さ並びに法第五十七条の四第一項 、法第五十八条 及び法第六十条の三第二項 に規定する高さ(北側の前面道路又は隣地との関係についての建築物の各部分の高さの最高限度が定められている場合におけるその高さに限る。)を算定する場合を除き、階段室、昇降機塔、装飾塔、物見塔、屋窓その他これらに類する建築物の屋上部分の水平投影面積の合計が当該建築物の建築面積の八分の一以内の場合においては、その部分の高さは、十二メートル(法第五十五条第一項 及び第二項 、法第五十六条の二第四項 、法第五十九条の二第一項 (法第五十五条第一項 に係る部分に限る。)並びに法別表第四(ろ)欄二の項、三の項及び四の項ロの場合には、五メートル)までは、当該建築物の高さに算入しない。
※高さに関する規定の一部、階数の規定にはない「階段室」「屋窓」が記されている。このことから「階段室」は原則として階数の算入から除外される対象ではないことがわかる。

◇エレベーターホールは階数に算入される
令第二条第一項で示されている昇降機塔とは、エレベーターが着床するホールではなく、あくまでもエレベーターの動力等の機械室を示している。したがってエレベーターで屋上に上がれる施設は階数として算入されることになる。この事は一般に手に入る専門書でも確認することができる。(ちなみに面積が1/8以下で必要最小限のエレベーターホールは「高さ」には算入されない)

kenchikuchishiki 多数の専門書を発行しているエクスナレッジ社の建築知識(2004年1月号)より抜粋。

市内の一級建築士事務所からお借りした。

ここには

屋上の空調機械室は令2条1項八号の規定の「その他これらに類する部分」として認められるが、屋上階に通常人が立ち入るホールがあるため階数に算入する

と記されている。

階段・エレベーターいずれにしろ、屋上を商業施設として利用するための塔屋が立てば、階数として算入されることになり、階数は二までと制限のかかっている当地では都市計画法上の許可を出すことはできない。

◇それでも市長は許可を出すのか?
都市計画法第五十三条では「都市計画施設の区域又は市街地開発事業の施行区域内において建築物の建築をしようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事等の許可を受けなければならない。」と定められており、今回の場合は武蔵野市長の許可を受けることになる。
先の一般質問では、事業内容の公表から日が浅く、ここまで踏み込んだ議論が出来なかったが市長は明確に「建築基準法に基づく判断に基づいて、違法性のない、もちろんグレーゾーンでもないような形で明確に、法に抵触しない形での利用とする」と述べている。

少なくとも市が公表している資料では、エレベータホール及び階段室と見受けられる塔屋が存在し許可の基準に適合していない、このことが分かっていながら許可を出すのだろうか?市長は法令に基づいた適正な判断を下すべきである。

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